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高森明勅
2022.12.12 08:00皇室

「日本」よりも「天皇」の方が歴史的に一層古いという事実

先に述べたように、わが国固有の君主号「天皇」の
成立年代は608年だった可能性が最も高いだろう。
しからば、国号の「日本」はどうか。

674年にまだ「倭国」を称していたことが
『日本書紀』の記事から分かる(天武天皇3年3月7日条)。
一方、『大宝令』(701年)では既に「日本」国号が
採用されていた(『令集解』公式令〔くしきりょう〕
「詔書式」条所引『古記』)。よって、「日本」国号の
成立が674年~701年の間だったことは、ほぼ疑う余地がない。

この間のことであれば、いつか。
様々な条件を勘案して689年の『飛鳥浄御原令』で
制度化されと想定するのが最も説得的ではあるまいか
(拙著『謎とき「日本」誕生』など参照)。

いずれにしても、「日本」国号の成立は「天皇」号の
成立より80年以上も時代がくだる。つまり、「天皇」は
「日本」より古いことになる。

しかも、「天皇」号の成立によって示されている、
シナ中心の国際秩序だった冊封(さくほう)体制からの
離脱という歴史的条件が前提として無ければ、
冊封体制に規定されていた「倭」(白川静氏『字通』に
字義について「したがう、低い姿勢」などとある)から
「日本」(昇る太陽の真下にある、太陽の恵みが豊かな国)
という“自尊”的な国号への転換は、不可能だったはずだ
(但し訓読みではどちらもヤマト)。

「天皇」は、単に「日本」より年代的に先行するだけでなく、
「日本」という国号が成立し得る不可欠な前提条件だった。
そのような歴史上の文脈において「“天皇”無くして“日本”無し」
と言っても、決して荒唐無稽ではないだろう。

なお、『古事記』には「天皇」という語が数多く出て来る
(初出は「天皇命」)一方、「日本」とあるべき箇所が
全て「倭」となっている。

これは、同書の原型が成立したと考えられる
天武天皇の時代(西條勉氏『古事記の文字法』ほか参照)、
既に「天皇」号が使われていた一方で、「日本」国号は
未成立だった実情を反映している(「天皇」号と「日本」国号が
同時期に成立したと見る学説もあるが、とても支持できない)。

追記
12月13日に発売の「女性自身」にコメント掲載。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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